スカイ・クロラ The Sky Crawlers

これまで映画で何かを伝えようとはしてこなかった？押井守監督が｢僕は今､若い人たちに伝えたいことがある｡｣と強い想いから作ったという作品です。
単純に押井作品のファンでもあるので、４年ぶりの新作は是非観たいと思ってましたが。
気がつけば公開から1ヶ月が経とうとしており、早く行かねば公開が終了してしまうと、急に思い立っていってきました。
20:10からのレイトショー時間ではありましたが、７割程度はお客さんが入っていたようです。

今の若者は、生きている実感を持てなくなってるように監督の目には映ってるようです。
なんとなく日々を過ごしてしまってるのは自分も同じなんですが(^^;

スカイ・クロラはベストセラー作家、森博嗣の同名小説が原作の物語です。
主な登場人物たちは「キルドレ」と呼ばれる、思春期で成長をやめてしまい、そのままだと永遠に行き続けてしまう子供たち。
世界は国対国の争いはなくなったものの、戦争がなければ平和の大切さを実感できない、平和を維持できないと、戦争を請け負う２つの企業が戦争を行うという世の中。
その企業の一員として、仕事として戦闘機に乗り戦うのがキルドレ達なのです。
主人公も戦闘機に乗って戦いますが、ひとに「気をつけてね」といわれても「何を？」と返してしまうくらい、自分自身のに命についてすら関心が薄いようです。
ひたすら戦闘を繰り返すだけの生活、それは戦死するまで続きます。

そんな中、主人公もさまざまな出来事の中で心境に変化が生まれていきます。
物語終盤での主人公のモノローグ、公式ホームページにも押井監督自らのコメントで載せているのでいいでしょう。

「いつも通る道でも、違うところを踏んで歩くことができる。いつも通る道だからって、景色は同じじゃない。それじゃいけないのか！？」

そして主人公はいつもと違う道へ向かっていく決心をします。
ここからクライマックスまで、涙で滲んでスクリーンが少しだけ観づらかったかな。

予備知識ゼロで行ったから、ところどころで主人公たちが物語の背景など語ってはくれるものの、正直作品世界の背景を把握するのに不安を抱えながら観ることになったのは残念だったけど、ところどころ「？」になりつつも、作品が訴えかけているテーマみたいなものはわかったつもりです。
例えそれで平穏が失われるとしても、一歩踏み出すことの大切さを伝えようとしているのでは。何事にも無関心でいることなく、生きることに関心を持てるような生き方をしようと。
同じ道でも関心をもって歩けば、違うところも見えてくるはずだと。
押井監督の熱いメッセージは、公式ホームページからどうぞ。
http://sky.crawlers.jp/index.html

今回ベネチア映画祭のコンペ部門に宮崎監督の『崖の上のポニョ』や北野武監督の『アキレスと亀』と一緒に選出されている作品です。
「本当は自分の大切な作品を他人の評価に委ねたくない」のだそうです。それでもノミネートを受けた理由を「頑張ってくれたスタッフのため」「役者にとってレッドカーペットは舞台、一緒に行く菊池凛子や加瀬亮にとっては参加することに意味がある」とインタビューに答えてました。

声の配役も主要メンバーは日本映画の実力派俳優陣が参加してます。
これまでのように仲間うち(スタジオ)だけでスタッフを集めてるのではないですね。
脚本はセカチュー、クローズドノートの伊藤ちひろ。脚本監修？として行定勲監督の名前もクレジットされてました。軍事監修で岡部いさく氏？の名前も(笑)。
様々な世界から様々な人材が参加している作品でもあると思いました。

キャラクターの芝居は手書きアニメーションですが、戦闘機どうしの空中戦などはフルCGIで作られていて、映画の開始直後からその迫力に圧倒されました(^^;
キャラの芝居とのシーンのギャップもそんなになかったかな？
とにかく迫力があっていいです。
手書きアニメ部分はどうしても長編だとシーンによってムラが出てしまいます。
宮崎キャラと違って(ぉぃ)、繊細なデザインのキャラクターを動かそうとしたら、仕方ない部分もありますが、そこは持っとかないと(なにを？)。

『アキレスと亀』は観ていないのでなんとも言えませんが、ベネチア向きかな？
『崖の上のポニョ』は理屈抜きで観ることのできる作品。どう転ぶかわかりません。
『スカイ・クロラ』は作品世界の背景がわからないとキルドレたちの心の葛藤など理解できないところもあるのではないかと心配になりますが、テーマは決して難しいものではないと思います。何らかの賞なり、評価が何かしら形となって評価されることを願います。

観てよかった。

とりあえず小説を読んで復習した後もう一度映画を観たい。
上映主要どころは来月5日までなんだけど、ベネチア効果でもう少し延長しないかな？(^^;

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